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2022.11.23

重度障害でも一人暮らしができる!

北海道新聞 どうしん電子版記事

北海道住宅新聞社web iezoom(いえズーム)

夏に完成した札幌市北区のhouse@mtb邸が北海道新聞社さんから取材を受け、この度記事にしてくれた。
アウラ建築設計事務所
【北海道新聞/重度障害1人暮らしできる 札幌の松原さん24時間介助受け 不安尽きぬが代えがたい自由】2022/11/17記事より転写
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重い障害があっても地域で普通の暮らしがしたい―。 十数人の介助を24時間交代で受けながら、1人暮らしを続ける重度障害者の男性がいる。
9年前の事故で介助が必要となった札幌市北区の松原健(たけし)さん(34)。施設や親元で長年暮らした障害者の中には自立生活を望みつつ、踏み出せない人も多い。
障害者の相談活動も行う松原さんは「協力者は現れる。夢を諦めないで」と語る。
札幌市北区の一軒家に今夏、にぎやかな声が響いた。電動車いすに乗り、介助者やその子どもら計約10人と新居でバーベキューを楽しむ松原さんがいた。松原さんは「ここに多くの人が訪れ、交流が生まれるのを見るのが幸せ」と話した。

■事故で頸髄損傷
 建設会社に勤めていた25歳の時、フォークリフトから転落し頸髄(けいずい)を損傷した。首から下がまひし人工呼吸器を使う。生活を支えるのは、重度障害者が介助者を選び、事業者を通さずに雇う札幌市の独自制度「パーソナルアシスタンス(PA)制度」だ。自己負担は原則1割。松原さんは学生や主婦ら十数人から24時間交代で食事や入浴の介助、家事援助などを受けている。
 事故後は約2年の入院の後、障害者施設で暮らした。携帯電話のメールを見たり、テレビチャンネルを変えたり、ささいなことが1人でできなかった。遠慮がちに職員に頼むと、「あなただけに何度も人を割けない」と言われたこともあった。1年で退去した。
 相談に乗ってくれたのは入院先で知り合ったソーシャルワーカーら。自立した生活がしたいと伝えると、PA制度を教えてくれた。部屋探しでは重度障害者と知ると入居を断る貸主もいたが、ソーシャルワーカーらは交渉も手伝ってくれた。フェイスブックで介助者を募り、市内のマンションで1人暮らしを始めた。
 当初は試行錯誤だった。希望する介助や掃除の仕方が伝わらないことや、常に介助者がいる生活に「1人になりたい」と思うこともあった。それでも食事や外出、睡眠時間を自分で決められることに、何にも代えがたい自由を感じた。

■周囲の意識変化
 松原さんと接する中で障害者や在宅介助への印象が変わった人もいる。毎月10日程度介助する市内の大学生工藤陽斗さん(20)は、介助が必要な時間以外は松原さんとゲームなどを楽しむ。工藤さんは「松原さんは障害者であると感じさせない」。松原さんも「思ったより楽しそうに生活していると驚かれる」と笑う。
 マンションには5年半暮らしたが、室内の狭さなどから、ベッドで過ごすことが多かった。2年前、バリアフリーの一軒家を労災保険などを資金に建てることを決意。6月に完成した。人が集えるよう居間は広めの16畳とし、段差をなくした。建築した札幌市南区のアウラ建築設計事務所代表の山下一寛さん(57)は「多くの仲間に囲まれて生きる松原さんの生活を大切にした」と話す。
 国は障害者が施設から地域での生活に移る「地域移行」を推進するが、松原さんのように自立して生活する人は少ない。厚生労働省のまとめでは、施設に入る全国の障害者のうち、自宅や、アパートのようなグループホームでの生活に移った人は2020年度末までの4年間で4・9%にとどまる。背景には入所者の高齢化や重度化、支援体制などの課題があるとされる。

■体験語る活動も
 松原さんは2年ほど前から、民間団体などの相談会や講演会で障害者の悩みを聞いたり、自身の体験を伝えたりする活動「ピアサポート」に取り組んでいる。松原さんは「重い障害があっても1人暮らしや家を建てることは不可能ではないと知ってほしい」と話す。
 1人暮らしを始めて約6年。介助者の調整が付かないことは今もあり、不安が尽きることはない。それでも松原さんは言う。「障害者は窮屈に生きているイメージがあるかもしれないが、実現できることはある。一歩を踏み出して」

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